いよいよ着陸である。少し緊張していたので、何度もベルトの締め具合を確かめたようにおぼえている。更にぐんぐん高度が下がっていき、窓からのぞくと眼下に東京湾、前方に空港が見えた。「おかしい」と思い始めたのはこのときからである。急に離陸する時のような「ゴオーッ」というエンジン音(後で考えると、これが「逆噴射」の音だったようだ)がしたかと思うと、今度は急に機内が静かになった。と同時に機首が急激に下がり、前のめりのような格好になったのである。普通、飛行機の着陸は機首を少し上げて後輪から先に着地するが、この時は丁度ジェットコースターが滑り落ちるような感じだった。私はずっと窓の外を眺めていたので、みるみる海面が接近するのがわかった。乗客のざわざわする音は聞こえたが、着陸寸前の一瞬の出来事だったので悲鳴などを聞いた記憶はない。「危ない!」と思ったが叫ぶ暇もなかった。「ドドーン!」。猛烈な衝撃だった。海水や機体の破片、座席、或いは乗客であったかもしれないが、前から一斉に色々なものが飛んできて私にぶち当たった。私は目の前が真っ暗になり、それからはほとんど気を失ったようだ。
とにかく「苦しい」という意識だけが残っていた。これがぎりぎりの救出につながったように思う。息ができず力の限りもがくとすぐに顔が海面にでた。どうやら海中に放り出されたらしい。といってもその時は墜落したこと自体を理解できなかった。眼鏡はどこかに飛んでなくなっていたし、顔がむくれて目がなかなか開かない。海水(ヘドロ)をたらふく飲んでいたらしく、まともに呼吸ができず、めいっぱい嘔吐を繰り返した。とにかく近くにあった機体の破片らしきものにしがみついていた。しばらくして徐々に回りが見えてきた。私の左側に機体が着水しており前方に主翼が見えて、回りは機体の破片が散乱していた。不思議なことにこのときまだシートベルトをしていた。座席ごと海の中に飛び出していたのである。もがいてすぐ顔が海面に出たのは、水深が浅かった(浅瀬であった)ことと、座席に浮力があったのか、座席に座ったまま体が浮き上がるような格好になっていたためだった。
とにかく「苦しい」という意識だけが残っていた。これがぎりぎりの救出につながったように思う。息ができず力の限りもがくとすぐに顔が海面にでた。どうやら海中に放り出されたらしい。といってもその時は墜落したこと自体を理解できなかった。眼鏡はどこかに飛んでなくなっていたし、顔がむくれて目がなかなか開かない。海水(ヘドロ)をたらふく飲んでいたらしく、まともに呼吸ができず、めいっぱい嘔吐を繰り返した。とにかく近くにあった機体の破片らしきものにしがみついていた。しばらくして徐々に回りが見えてきた。私の左側に機体が着水しており前方に主翼が見えて、回りは機体の破片が散乱していた。不思議なことにこのときまだシートベルトをしていた。座席ごと海の中に飛び出していたのである。もがいてすぐ顔が海面に出たのは、水深が浅かった(浅瀬であった)ことと、座席に浮力があったのか、座席に座ったまま体が浮き上がるような格好になっていたためだった。